BtoB SaaSのマーケティング施策はどう選ぶ?ホリゾンタル・バーティカル別の優先順位

BtoB SaaSのマーケティング施策はどう選ぶ?ホリゾンタル・バーティカル別の優先順位

BtoB SaaSのマーケティングでは、知名度の高い施策から始めるのではなく、自社がホリゾンタルSaaSなのか、バーティカルSaaSなのかを整理することが大切です。

さらに、検索需要、業界内のつながり、ターゲット部署、予算、社内の知見によって施策の優先順位は変わります。本記事では、限られた予算のなかで施策を選ぶ具体的な手順を解説します。

関連記事:スタートアップのBtoBマーケティング戦略|フェーズ別の施策と指標

BtoB SaaSのマーケティング施策は、事業タイプから考える

BtoB SaaSのマーケティング施策を考える際は、最初に自社のサービスがホリゾンタルSaaSなのか、バーティカルSaaSなのかを整理します。

ホリゾンタルSaaSは、業界を問わず幅広い企業で使われるサービスです。営業支援、人事管理、会計、マーケティング、情報セキュリティなどが代表的です。

一方、バーティカルSaaSは、医療、建設、物流、不動産、製造、小売など、特定の業界や業務に特化したサービスです。

ただし、ホリゾンタルかバーティカルかを決めるだけでは、具体的な施策までは決まりません。

その次に、人事部、営業部、マーケティング部、情報システム部、経営企画部など、実際にサービスを導入する部署を決めます。

同じSaaSでも、営業部向けに売る場合と情報システム部向けに売る場合では、検索されるキーワード、参加する展示会、反応する広告表現が変わります。

「どの企業に売るか」だけでなく、「その企業の、どの部署の誰が困っているのか」まで具体化しておきたいところです。

最初に確認したい施策の判断基準

ホリゾンタルSaaSでは、顧客がすでにサービスのカテゴリー名を認識し、検索しているかどうかが主な判断軸になります。

一方、バーティカルSaaSでは、対象業界の課題や情報の流れ、業界団体や協会の影響力を理解することから始めます。

大まかな判断基準は、次のとおりです。

市場や顧客の状態最初に検討したい施策
カテゴリー名で検索する顧客がいるリスティング広告
カテゴリー自体がまだ認知されていないMeta広告、課題訴求型コンテンツ
検索結果に競合の記事が多く表示されるオウンドメディア
ターゲット企業が特定の展示会に集まる展示会出展
業界団体や協会の影響力が強い共催企画、勉強会、アライアンス
対象企業や決裁者をリスト化しやすいCXOレター、アウトバウンド
同業他社の事例が判断材料になりやすい導入事例、プレスリリース

実際には、この判断基準のうち、複数の条件に当てはまるケースがほとんどです。

たとえば、カテゴリー名で検索されており、ターゲットが集まる展示会もあり、Meta広告で競合が継続的に広告を出していることもあります。

この場合、リスティング広告、展示会、Meta広告、オウンドメディアのすべてが施策の候補になります。

ただし、候補になった施策を一度にすべて実施すると、予算や担当者の時間が分散します。どの施策が商談や受注につながったのかも判断しにくくなります。

複数の施策が候補に挙がった場合は、主に次の2点から優先順位を決めます。

  • 成果を判断できるところまで継続する予算があるか
  • その施策を運用できる知見を持つ人が社内にいるか

施策そのものの良し悪しだけでなく、「今の自社がきちんと運用し、改善できるか」まで考えることが重要です。

BtoB SaaSマーケティング施策の予算感

施策を選ぶ際は、単月の実施費用だけでなく、成果を判断できるだけのデータを集める予算があるかを確認します。

リードファクトリーでは、施策を検討する際の予算感として、次の金額を一つの目安にしています。

施策検討しやすい予算の目安補足
リスティング広告月額10万円~検索数やクリック単価によって必要予算が変わる
Meta広告月額30万円~複数の訴求やクリエイティブを検証する
展示会1回100万円~一般的な出展は総額400万円前後を想定する
オウンドメディア小さく開始可能AIを使い、社内の知見を記事化する

リスティング広告は、月額10万円程度から検証できます。

ただし、検索ボリュームが少ないカテゴリーでは、予算を使い切れないことがあります。反対に、クリック単価が高い市場では、月額10万円では十分なデータを集められない可能性もあります。

Meta広告は、複数の広告クリエイティブや訴求を比較することを考えると、月額30万円程度から検討しやすくなります。

予算が少なすぎると、広告の良し悪しを判断する前に配信量が不足しやすいためです。

展示会は、最低限の小規模な出展であれば、1回100万円程度から実施できます。

ただし、ある程度の規模の展示会で、来場者の目に留まるブースを設け、事前準備から開催後のフォローまで行う場合は、総額400~500万円前後になることも珍しくありません。

展示会は出展料だけで判断せず、施策全体にかかる予算と、商談化まで対応できる社内体制を踏まえて検討します。

関連記事:BtoBマーケティングの展示会|出展のメリットや費用を徹底解説

オウンドメディアは予算にかかわらず進めたい

オウンドメディアについては、生成AIの普及によって、記事作成にかかる金銭的なコストをほぼゼロに近づけられるようになりました。

以前は、記事の企画、構成、執筆を外部へ依頼する場合、継続的にまとまった制作費が必要でした。

現在は、自社の知見や事例をもとに生成AIで構成と初稿を作れば、少なくとも文章制作そのものにかかる費用は大きく抑えられます。

※当社の記事もAIを使ってすべて内製で作成しております。

そのため、検索需要があるテーマについては、広告予算の大小にかかわらず、オウンドメディアを並行して進めるのがおすすめです。

ただし、AIで一般的な情報をまとめただけの記事を量産しても、検索結果で選ばれる理由にはなりにくいでしょう。

記事に入れたいのは、次のような自社にしか書けない情報です。

  • 顧客から実際に聞かれた質問
  • 提案や支援で使っている判断基準
  • 施策を実施した際の結果や気づき
  • うまくいかなかった方法とその理由
  • 業界や企業規模による違い
  • 自社サービスを使った検証の過程

AIは、文章を作るコストを下げてくれます。

一方で、どの知見を公開するかを決めることや、内容が正しいか確認することは、人が行う必要があります。

記事制作費が下がった分、自社の経験を整理し、継続的に発信することへ時間を使いたいところです。

ホリゾンタルSaaSは検索需要と競合の動きから施策を決める

ホリゾンタルSaaSでは、最初に「顧客がすでにサービスのカテゴリーを認識しているか」を確認します。

たとえば、勤怠管理システム、MAツール、電子契約、営業支援ツールのように、カテゴリー名で検索されているサービスであれば、リスティング広告から検証しやすいです。

一方、新しい仕組みや、まだ一般的な呼び方が定まっていないサービスは、カテゴリー名で検索されません。

この場合は、検索広告だけに予算を使うより、Meta広告や課題訴求型コンテンツで認知を作る方法が候補になります。

ただし、検索ボリュームだけを見て施策を決めるのはおすすめしません。

ホリゾンタルSaaSでは、次の順番で市場を確認すると判断しやすくなります。

1.カテゴリー名と課題キーワードを洗い出す

まずは、顧客がサービスを探すときに使うカテゴリー名と、サービス導入前に感じている課題を分けて整理します。

たとえば、営業支援ツールであれば、カテゴリー名として「SFA」「営業管理ツール」「CRM」などが考えられます。

一方、課題を表すキーワードには、次のようなものがあります。

  • 営業情報が属人化している
  • 案件の進捗を把握できない
  • 営業日報の管理が大変
  • 商談の引き継ぎがうまくいかない

カテゴリー名で検索する人は、すでに何らかのツールを探している可能性があります。

課題キーワードで検索する人は、まだ解決方法を決めていない段階です。

この2種類を分けることで、リスティング広告で獲得する層と、コンテンツやMeta広告で認知を作る層を整理できます。

2.月間検索数と実際の検索結果を確認する

次に、主要なキーワードの月間検索数を確認します。

ただし、検索数が多いからといって、そのまま有望なキーワードになるとは限りません。実際に検索し、どのようなページが上位に表示されるかまで確認します。

たとえば、「営業管理」というキーワードの検索数が多くても、営業管理職の仕事内容を調べている人が多ければ、SaaSの見込み顧客にはつながりにくいかもしれません。

反対に、検索数がそれほど多くなくても、検索結果に比較記事、料金ページ、サービス紹介ページが並んでいれば、導入を検討している人が使うキーワードである可能性があります。

主要キーワードについては、検索結果の上位10件程度を確認し、ページの種類を見ます。

  • SaaS企業のサービスページ
  • 比較サイト
  • オウンドメディアの記事
  • 求人・転職サイト
  • 用語解説やニュース記事

競合企業のサービスページや記事が多く表示される場合は、リスティング広告やオウンドメディアを検討しやすい状態です。

検索数だけで判断せず、検索している人が何を求めているのかまで確認することが大切です。

3.Meta広告ライブラリで競合の出稿状況を見る

カテゴリーがまだ認知されていない場合や、検索数が少ない場合は、Meta広告ライブラリで競合の出稿状況を確認します。

競合企業名やサービス名を検索すると、現在配信されている広告を見ることができます。

ここで確認したいのは、競合がMeta広告を出しているかどうかだけではありません。

どのような課題を広告の入口にしているのか、誰に向けているのか、何をコンバージョン地点にしているのかを見ます。

たとえば、次のような点です。

  • 機能、事例、調査データのどれを訴求しているか
  • 人事、営業、マーケティングなど、誰に向けているか
  • 資料請求、無料相談、無料トライアルのどこへ誘導しているか
  • 同じ訴求の広告を長期間配信しているか

競合が継続的に広告を出している場合は、その媒体で一定の反応を得られている可能性があります。

ただし、競合の広告をそのまま真似するのではなく、「どの課題とオファーの組み合わせが使われているか」を自社の仮説づくりに活用します。

4.競合が継続しているチャネルを確認する

広告だけでなく、競合が継続的に実施している施策も確認します。

毎月ウェビナーを開催している、特定の展示会へ毎年出展している、オウンドメディアを継続的に更新しているといった動きです。

単発で実施した施策よりも、競合が半年、1年と続けている施策のほうが参考になります。

もちろん、競合が実施しているから自社にも合うとは限りません。

ただ、限られた予算のなかで施策を選ぶ際の判断材料にはなります。

ホリゾンタルSaaSの施策展開例

検索需要があるホリゾンタルSaaSでは、次の順番で施策を展開すると整理しやすくなります。

リスティング広告+オウンドメディア

→ 展示会

→ Meta広告+ウェビナー

→ CXOレター、顧問、アライアンス、コミュニティ運営

ただし、この順番は固定ではありません。

検索需要がほとんどない場合や、ターゲット企業が限定されている場合は、展示会やアウトバウンドを先に実施することもあります。

最初にリスティング広告とオウンドメディアを始める

リスティング広告では、カテゴリー名、比較キーワード、課題キーワードを分け、どの検索語句から商談が生まれるか確認します。

このとき、広告管理画面のコンバージョン数だけで判断しないことが大切です。

問い合わせや資料請求が発生しても、商談につながらなければ、キーワードとターゲットがずれている可能性があります。

CRMと連携し、リード、有効リード、商談、案件、受注まで追える状態を作ります。

関連記事:アポCPA・MQL改善の打ち手|リードが増えてもアポが取れない理由

オウンドメディアは、リスティング広告と並行して進めます。

検索広告で反応のよかったキーワードや、商談で頻繁に聞かれる質問は、そのまま記事のテーマとして活用できます。

記事が検索結果に表示されるまでには時間がかかるため、広告で短期的な商談を作りながら、コンテンツを中長期的な資産として蓄積します。

次に展示会を追加する

広告でターゲットや訴求の方向性が見えてきたら、展示会を追加します。

展示会では、広告で反応のよかった課題をブースの訴求に使い、来場者がどの言葉に反応するかを確認します。

また、展示会でよく聞かれた質問は、広告文、営業資料、記事、ウェビナーのテーマに展開できます。

展示会を単発の名刺獲得施策として扱うのではなく、顧客理解を深め、ほかの施策へ知見を還元する場として使います。

Meta広告とウェビナーで接点を広げる

検索広告や展示会で顧客の課題が分かってきたら、Meta広告を追加します。

Meta広告は、まだサービスを探していない人にも配信できるため、カテゴリー認知や課題認知を広げたい段階に向いています。

Meta広告からいきなり商談を求めると、ハードルが高くなるケースがあります。

そのため、調査資料、事例集、チェックリスト、ウェビナーなど、顧客が受け取りやすいオファーを用意します。

ウェビナーは、広告や展示会で接点を持ったものの、すぐには商談化しなかった顧客との継続接点として活用できます。

大手企業を狙う段階でCXOレターやアライアンスを追加する

受注実績や導入事例が増えてきたら、CXOレター、顧問紹介、アライアンス、コミュニティ運営へ広げます。

特に大手企業を狙う場合は、広告だけで決裁者へ接触するのが難しいことがあります。

対象企業を絞り、相手企業のIR資料や事業方針を確認したうえで、個別の課題に合わせたアプローチを行います。

また、ホリゾンタルSaaSであっても、導入企業側は同業他社の事例をよく見ています。

導入事例だけでなく、どのような課題に対して、どのような検証を行っているのかをプレスリリースで発信することも有効です。(実証実験など)

関連記事:エンタープライズ開拓で失敗しないために。BtoBマーケティングのターゲティング戦略と3つの注意点

バーティカルSaaSは業界の課題と情報の流れから施策を決める

バーティカルSaaSでは、広告媒体を選ぶ前に、対象業界が今どのような課題を抱えているかを理解することから始めます。

同じ「業務効率化」という訴求でも、建設、物流、医療、製造では、困っている場面も使われる言葉も異なります。

業界の文脈を理解しないまま一般的な訴求をすると、サービスの機能は合っていても、相手に自分たち向けのサービスだと感じてもらえないことがあります。

バーティカルSaaSでは、次の順番で市場を調べます。

1.業界のトレンドを確認する

まずは、対象業界で現在どのような変化が起きているかを確認します。

法改正、人手不足、原材料費や人件費の上昇、DX、省人化、業界再編など、その業界の経営者や担当者が関心を持っているテーマを把握します。

業界ニュースだけでなく、業界特化型展示会のセミナーテーマも参考になります。

複数の展示会で同じテーマが取り上げられている場合、その業界で関心が高まっている課題である可能性があります。

そこで使われている言葉は、広告、営業資料、ウェビナー、プレスリリースの表現にも活用できます。

2.業界を代表する企業のIR資料を読む

次に、対象業界の売上上位企業や、その業界を象徴する企業のIR資料を確認します。

最初は3〜5社程度を見ると、業界に共通する課題を捉えやすくなります。

確認したいのは、決算の数字そのものより、次のような項目です。

  • 中期経営計画で重点テーマに挙げているもの
  • 決算説明資料で繰り返し触れている課題
  • 今後増やす予定の設備投資やIT投資
  • 人材確保や生産性向上に関する方針
  • リスク情報に書かれている業界特有の問題
  • 新規事業やデジタル化に関する取り組み

たとえば、物流業界向けのSaaSであれば、「業務効率化」という一般的な言葉だけでなく、ドライバー不足、配送原価、積載率、拠点間の情報連携など、業界内で実際に使われている言葉を拾います。

複数社の資料で共通して登場する課題は、特定企業だけでなく、業界全体に広がっている可能性があります。

その課題と自社サービスの機能を結び付けることで、広告や営業資料の訴求を作りやすくなります。

3.業界団体や協会の影響力を確認する

続いて、その業界に横のつながりがあるかを調べます。

業界団体、協会、経営者会、研究会、地域組合、業界専門メディアなどを確認します。

業界団体や協会の影響力が強い場合は、Web広告だけで個社へアプローチするより、団体との共催企画や勉強会、会員企業への紹介を検討したほうが接点を作りやすいことがあります。

いきなり営業提携を打診するのではなく、業界課題に関する調査、セミナー、事例共有会など、相手側にも提供価値がある企画から始める方法があります。

業界の横のつながりが強い場合、一社の導入事例や評判が別の企業へ広がりやすくなります。

そのため、マーケティング施策だけでなく、導入支援や顧客対応も含めて設計したいところです。

4.業界特化型展示会の出展企業と来場者を調べる

業界団体の影響力がそれほど強くない場合でも、業界特化型の展示会には出展を検討します。

バーティカルSaaSは対象企業数が限られる分、見込み顧客が一か所に集まる場の価値が高くなります。

出展を決める前には、過去の出展企業と来場者の属性を確認します。

来場者数が多くても、自社のターゲットが少なければ費用対効果は合いません。

反対に、来場者数がそれほど多くなくても、対象企業の担当者や決裁者が集まる展示会であれば、十分に検討する価値があります。

競合企業が毎年継続して出展しているかどうかも、一つの判断材料になります。

バーティカルSaaSの施策展開例

バーティカルSaaSでは、業界内での認知と信用を作りながら、対象企業へ個別にアプローチする流れが基本になります。

施策展開は、次の順番で整理できます。

プレスリリース+展示会+オウンドメディア

→ CXOレター、顧問、アウトバウンド

→ コミュニティ運営、アライアンス

ただし、業界内の横のつながりが強い場合は、初期段階から協会やパートナーとの共催を進める方法もあります。

対象企業数が少なく、決裁者を特定しやすい場合は、展示会よりもアウトバウンドやCXOレターを先に進める選択肢もあります。

最初にプレスリリースと展示会を進める

バーティカルSaaSでは、業界内での認知と信用を作るために、プレスリリースと業界特化型展示会を組み合わせます。

プレスリリースというと、新サービスの公開や資金調達の発表をイメージしやすいですが、それ以外の情報も発信材料になります。

たとえば、業界課題に関する調査、導入企業との実証実験、新機能の開発背景、パートナー企業との取り組みなどです。

完成した成功事例だけを出す必要はありません。

「どのような課題に対して、どのような検証をしているのか」という過程を見せることで、似た課題を持つ企業に興味を持ってもらえることがあります。

展示会では、ブースで頻繁に聞かれた質問や、反応のよかった訴求を記録し、プレスリリース、営業資料、記事、ウェビナーへ展開します。

展示会を名刺獲得だけで終わらせず、業界理解を深める場としても活用します。

バーティカルSaaSでは検索ボリュームが小さいこともありますが、業界特有の課題や専門用語で記事を作ることで、対象企業からの流入につながる可能性があります。

検索数の大きさだけでなく、見込み顧客が読む可能性があるかを基準にテーマを選びましょう。

次にCXOレター、顧問、アウトバウンドを追加する

バーティカルSaaSは、対象となる企業をある程度リスト化しやすい特徴があります。

対象企業が数百社、数千社と限定されている場合は、広告だけに頼るよりも、個別のアウトバウンドを組み合わせる方法が効果的です。

代表的な施策は、CXOレター、業界経験者からの紹介、アウトバウンドコールです。

アプローチ前には、相手企業のIR資料、ニュース、採用情報などを確認します。

相手企業が新しい拠点を増やしている、特定事業へ投資している、人員不足を課題として挙げているなどの情報があれば、その状況に合わせて連絡内容を変えます。

一斉に同じ営業文を送るのではなく、対象企業の状況と自社サービスを結び付けることで、話を聞いてもらいやすくなります。

業界経験のある顧問やアドバイザーがいる場合は、企業を紹介してもらうだけでなく、業界の商習慣、意思決定者、導入時の障壁についても知見を借ります。

導入企業が増えたらコミュニティとアライアンスへ広げる

導入企業や協力企業が増えてきたら、コミュニティ運営とアライアンスを検討します。

ユーザー会や勉強会では、既存顧客の活用支援と、新規顧客への認知拡大を同時に進められます。

サービスの機能紹介だけを行うのではなく、業界共通の課題をテーマにし、導入企業や専門家に登壇してもらう形が考えられます。

アライアンス先としては、同じ顧客層を持つ周辺サービス、業界向けのコンサルティング会社、システム開発会社、販売代理店、業界専門メディアなどがあります。

すでに業界内で信頼を得ている企業と組むことで、自社単独では作れない接点を増やしやすくなります。

社内に施策の知見を持つ人がいるかを確認する

予算と同時に確認したいのが、その施策を運用できる人が社内にいるかどうかです。

リスティング広告の経験者がいれば、検索語句、広告文、LP、商談化率を見ながら改善できます。

一方、広告運用の経験者がいない場合は、成果が出ない原因が市場、広告設定、訴求、LPのどこにあるのか判断できないことがあります。

展示会も同様です。

出展経験がある担当者であれば、事前集客、ブースでのヒアリング、見込み度の分類、開催後のインサイドセールスまで設計できます。

経験がない場合は、名刺を集めることが目的になり、その後の商談化につながらないケースもあります。

複数の施策が候補に挙がった場合は、次のように整理します。

  • 予算があり、社内に知見もある施策は優先して進める
  • 予算はあるが知見がない施策は、外部支援を活用する
  • 知見はあるが予算が限られる場合は、小さく検証する
  • 予算も知見も不足している施策は、後の段階に回す
  • オウンドメディアは、AIを活用して可能な範囲から並行する

成果が出る可能性のある施策でも、社内で運用や改善ができなければ、十分な結果につながらないことがあります。

「何を実施するか」と同じくらい、「誰が運用するか」も重要です。

BtoB SaaSで施策選定を誤りやすい3つの場面

BtoB SaaSのマーケティングでは、施策そのものよりも、評価の仕方で判断を誤ることがあります。

特に気をつけたいのは、検索数、リードCPA、名刺獲得数など、施策の途中にある数字だけを見てしまうことです。

1.検索ボリュームだけでリスティング広告を判断する

リスティング広告を検討する際、キーワードの月間検索数は重要な判断材料です。

ただし、検索数が多いキーワードが、そのまま商談につながるとは限りません。

たとえば、「営業管理」というキーワードには、営業管理ツールを探している人だけでなく、営業管理職の仕事内容や営業管理の方法を調べている人も含まれます。

一方で、検索数が少なくても、「営業管理ツール 比較」「SFA 乗り換え」のように、導入意欲が高いキーワードであれば、商談につながる可能性があります。

検索ボリュームだけでなく、実際の検索結果、広告を出している競合、問い合わせ後の商談化率まで確認します。

2.リードCPAだけで広告を評価する

広告施策では、リードCPAが分かりやすい指標として使われます。

ただし、リードCPAが安い施策ほど、成果が良いとは限りません。

Meta広告で資料ダウンロードを増やした結果、リードCPAは下がったものの、商談につながる企業がほとんど含まれていないことがあります。

反対に、リスティング広告のリードCPAが高くても、検討度の高い企業が多く、商談化率や受注率まで含めると採算が合うケースもあります。

たとえば、リードCPAが1万円の広告と3万円の広告があったとしても、1万円の広告から商談がほとんど生まれず、3万円の広告から受注が出ているのであれば、後者へ予算を寄せる判断になります。

広告管理画面だけでは、この違いは分かりません。

CRMと連携し、どの広告、キーワード、コンテンツから受注が生まれたのか確認できる状態を作る必要があります。

3.展示会やウェビナーを単発で終わらせる

展示会やウェビナーは、一度の実施で多くの見込み顧客と接点を作れる施策です。

一方で、開催後のフォローを設計していないと、名刺や参加者リストを獲得しただけで終わってしまいます。

展示会では、終了後に名刺を一律で営業担当へ渡すのではなく、ブースでの会話をもとに見込み度を分けます。

具体的な課題や導入時期がある企業には、インサイドセールスから早めに連絡します。

情報収集段階の企業には、関連する事例、記事、ウェビナーを案内し、継続的に接点を持ちます。

ウェビナーも同様です。

参加者全員へ同じ案内を送るのではなく、アンケート回答、視聴状況、会社情報などをもとに、その後の対応を分けます。

展示会やウェビナーは、開催日が施策の終了日ではありません。

そこからインサイドセールスとコンテンツマーケティングを始めるイメージで設計します。

マーケティング施策はCRM上で受注まで追う

BtoB SaaSでは、問い合わせから受注まで数か月かかることもあります。

そのため、広告を出した月のリード数だけを見ていると、施策の本当の成果を判断できません。

マーケティング施策は、次の流れでチャネル別に管理します。(Meta広告、リスティング広告、展示会etc…)

リード獲得

→ 有効リード

→ 商談

→ 案件化

→ 受注

→ 受注金額・契約期間

また、施策ごとに、少なくとも次の指標を確認します。

指標確認したいこと
リード数問い合わせや資料請求をどれだけ獲得したか
有効リード数ターゲット企業や対象部署からの反応か
商談数営業が実際に接触できたか
案件数導入時期や予算が具体化したか
受注数・受注金額最終的に売上へつながったか

たとえば、展示会から100件の名刺を獲得しても、商談が2件しか生まれなければ、名刺獲得単価だけで評価するのは難しいでしょう。

一方で、獲得数が30件でも、そのうち10件が商談化し、複数件の受注につながっていれば、次回も出展する判断ができます。

また、受注数だけでなく、受注金額や契約期間も確認します。

同じ1件の受注でも、月額数万円の契約と、年間数百万円の契約では、許容できるマーケティングコストが異なります。

関連記事:LTV(ライフタイムバリュー)とは?計算方法や最大化させる施策も解説

繰り返しにはなりますが、すべてのデータをCRM上で一つにつなげることで、次のような判断ができるようになります。

  • 商談化率の高い広告媒体はどこか
  • 受注につながるキーワードは何か
  • 展示会とウェビナーのどちらが案件化しやすいか
  • ホワイトペーパー経由のリードは何か月後に受注するか
  • 受注単価の高い企業は、どの施策から接点を持ったか

限られた予算をどこへ配分するか判断するためにも、最終的な商談、受注、売上まで追える計測環境を整えることが大切です。

まとめ

BtoB SaaSのマーケティング施策を考えるときは、最初から手法を選ぶのではなく、自社のサービスがどのような市場にいるのかを整理することが大切です。

ホリゾンタルSaaSであれば、まずカテゴリー名で検索されているかを確認します。すでに検索需要がある場合はリスティング広告から始めやすく、まだカテゴリー自体が認知されていない場合は、Meta広告や課題訴求型のコンテンツで認知を広げる方法が候補になります。

一方、バーティカルSaaSでは、対象業界のトレンドや上位企業のIR資料、業界団体、展示会などを調べ、業界のなかでどのような課題が共有されているのかを理解することから始めます。そのうえで、展示会、プレスリリース、アウトバウンド、アライアンスといった施策を組み合わせていきます。

ただし、実際には一つの施策だけが候補になることは少なく、リスティング広告も展示会もMeta広告も使えそう、という状態になることがほとんどです。

そのときに基準になるのが、成果を判断できるところまで継続する予算があるか、そして社内にその施策を運用できる知見があるかです。施策として相性がよくても、十分な予算や運用体制がなければ、正しく検証できないまま終わってしまうことがあります。

また、オウンドメディアについては、生成AIによって記事作成の金銭的なコストが大きく下がっているため、広告や展示会と並行して進めやすくなっています。ただし、一般的な情報をまとめるだけではなく、顧客から実際に聞かれた質問や、支援のなかで得た気づき、自社独自の検証結果を盛り込むことが重要です。

施策を実施した後は、リード数やCPAだけで評価せず、有効リード、商談、案件、受注、受注金額までCRM上で追います。獲得数が多い施策ではなく、最終的に売上へつながっている施策へ予算を寄せていくことで、自社に合ったマーケティングの型が見えてきます。

リードファクトリーでは、BtoBマーケティング支援とインサイドセールス支援を通じて、施策の優先順位づけから実行、効果測定、商談化まで一貫してご支援しています。

マーケティング施策が増えて整理できていない場合や、限られた予算をどこへ配分すべきか迷っている場合は、お気軽にご相談ください。

BtoB SaaSマーケティングに関するよくある質問

BtoB SaaSでは、最初にどのマーケティング施策を行えばよいですか?

最初に、自社がホリゾンタルSaaSなのか、バーティカルSaaSなのかを整理します。

ホリゾンタルSaaSで検索需要がある場合はリスティング広告、バーティカルSaaSで対象企業が展示会に集まる場合は業界特化型展示会から始める方法があります。

ただし、施策の優先順位は市場の状態だけでなく、使える予算と社内の運用体制によって変わります。

ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSでは、マーケティング施策がどう変わりますか?

ホリゾンタルSaaSでは、カテゴリーの検索需要や競合の広告出稿状況をもとに、リスティング広告、Meta広告、オウンドメディアなどを選びます。

バーティカルSaaSでは、業界トレンド、IR資料、業界団体、展示会などから業界課題と情報の流れを把握し、展示会、プレスリリース、アウトバウンド、アライアンスなどを組み合わせます。

検索ボリュームが少ないSaaSでもSEOに取り組むべきですか?

検索ボリュームが少なくても、見込み顧客が検索するテーマであれば記事を作る価値があります。

特にバーティカルSaaSでは、業界特有の課題や専門用語の検索数が小さいことがあります。

しかし、検索する人が導入担当者や決裁者であれば、少ない流入から商談につながる可能性があります。

検索数の大きさだけでなく、検索する人の属性と検討意欲を確認します。

BtoB SaaSでもMeta広告は使えますか?

Meta広告は、まだサービスのカテゴリー名を知らない顧客へ、課題を入口に認知を広げたい場合に使いやすい施策です。

ただし、いきなり商談を求めると反応が得られにくいことがあります。

調査資料、事例集、チェックリスト、ウェビナーなど、受け取りやすいコンテンツを用意する方法がおすすめです。

複数の訴求やクリエイティブを検証する場合は、月額30万円程度から検討すると運用しやすくなります。

BtoB SaaSのオウンドメディアは生成AIだけで運営できますか?

生成AIを使えば、記事構成や初稿作成の金銭的なコストを大きく抑えられます。

一方で、生成AIだけで作った一般的な記事では、競合との差が出にくくなります。

顧客から聞かれた質問、商談での気づき、実際の支援手順、検証結果など、自社にしか書けない情報を人が追加することが重要です。

BtoB SaaSのマーケティング施策は、どの指標で評価しますか?

リード数やリードCPAだけでなく、有効リード数、商談数、案件数、受注数、受注金額まで確認します。

広告管理画面上では成果が良く見えても、商談や受注につながっていないことがあります。

CRMと広告、展示会、ウェビナーのデータを連携し、最終的な売上まで追える状態を作ることが大切です。

展示会はどのくらいの予算から検討できますか?

最低限の小規模な出展であれば、1回100万円程度から検討できます。

ただし、一般的な規模で出展し、事前準備から開催後のフォローまで行う場合は、総額400万円前後を見込んでおくと現実的です。

展示会は名刺獲得数だけで判断せず、有効リード数、商談数、案件数、受注金額まで追い、次回も出展するかを判断します。

著者プロフィール(EEAT用パーツ)

WRITTEN BY

株式会社リードファクトリー 代表取締役 遠藤由規

代表取締役

一橋大学商学部を卒業後、ENEOS株式会社に新卒入社。その後、日本最大級の屋内型エンターテインメント施設 「アートアクアリウム美術館」の立ち上げに新規事業責任者として参画。2021年よりベンチャー支援のSOICO株式会社にて マーケティング・インサイドセールス責任者を務め、PHC株式会社ではAPACの海外BtoBマーケティング立ち上げに従事。 2023年5月、株式会社LEAD FACTORY.を創業。BtoBマーケティング・インサイドセールスの実務知見をもとに、 スタートアップから大企業まで幅広い規模の事業成長を支援している。

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