製造業のWebマーケティングの特徴とは?戦略の立て方や実践方法について解説!

こんにちは、リードファクトリーの遠藤です。

製造業のWebマーケティングは、他の業種と比べて特徴的な課題や戦略があります。製品の特性やターゲット層、競合状況などに応じて、最適なWebマーケティングの方法を見つける必要があります。

しかし、製造業のWebマーケティングに関する情報は、インターネット上にあまり多くありません。というのも他の業界と比べて圧倒的に難しいからです。

難しい理由は多くありますが、基本的にマーケティングは外部の専門家の力を借りて進めることが多いです。そのため、以下が障害となりやすいです。


  • 専門性が高く、初期の学習コストが非常に高い
  • 中小製造業の場合、専任のマーケ担当者がいない

営業と兼任をしていたりカタログ・販促物の制作をする方がWebマーケティングも担当している場合も少なくありません。

そのため、幅広い施策について理解を深める必要があり、その施策が自社の事業成長に貢献する可能性があるかの判断をすることも重要です。

そこで、この記事では、製造業のWebマーケティングについて、これから始めていきたい人から今のマーケティング施策に頭打ちを感じている製造業のマーケティング担当者の方へ向けて、製造業のWebマーケティングの基礎から応用までを解説していきます。

製造業のWebマーケティングの現状と課題

売上高をみると、「卸売業,小売業」が500兆7943億円(全産業の30.8%)と最も多く、次いで「製造業」が396兆2754億円(同24.4%)、「金融業,保険業」が125兆1303億円(同7.7%)などとなっており、上位3産業で全産業の6割強を占めている。また、第三次産業で全産業の68.5%を占めている。

付加価値額をみると、「製造業」が68兆7891億円(全産業の23.8%)と最も多く、次いで「卸売業,小売業」が54兆1633億円(同18.7%)、「建設業」が20兆8207億円(同7.2%)などとなっており、上位3産業で全産業の5割弱を占めている。また、第三次産業で全産業の68.4%を占めている。

平成28年経済センサス-活動調査

上記の通り、企業等数・売上高・付加価値額の全てにおいて製造業は高い割合を示しており、日本のあらゆる産業の中でも重要な位置を占めています。

しかし、製造業のWebマーケティングは、他の業種に比べて遅れていると言われています。なぜなら、製造業は、前述の通りマーケティングの専門家が介入しずらい業界であるためWebマーケティングの浸透やアップデートが起こりづらいからです。

他業界では当たり前な施策も製造業ではまだまだ実装されていないことも多々あります。(逆に製造業では現場の”カイゼン”に関しては、世界のTOPクラスですし、様々な製造現場においても非常に優秀な方が多いです。)

この記事では、そういった現状も踏まえて製造業のWebマーケティングの特徴と課題および具体的な施策について解説します。

製造業のWebマーケティングの特徴

製造業のWebマーケティングには、以下のような特徴があります。

  • 製品やサービスが高度で専門的であるため、ターゲット層が限定される
  • 購買サイクルが長く、複数のステークホルダーが関わる
  • 既存の顧客やパートナーとの関係性を維持することが重要である
  • ブランドイメージや差別化要因を訴求することが難しい

これらの特徴から、製造業のWebマーケティングは、単に見込み客を集めるだけではなく、見込み客を育成し、信頼関係を構築し、長期的にお取引をしLTVを高めることが必要です。

また、BtoB企業の場合、特にメーカー企業であれば製品ライフサイクルとよばれる、製品が市場に投入されてから、寿命を終え衰退するまでのサイクルが長く、10数年前のモデルを未だに使用しているユーザーもいるような環境です。

上記のように製品寿命が長い場合は、修理・メンテナンスや交換品の情報に加え、生産終了(EOL)になった製品情報とその後継機種の情報などをユーザーに分かりやすくWeb上で伝える必要もあります。

一方でサプライヤーとしてメーカーなどに部材を納品する企業については、差別化や自社の強みをどのように表現するのかが大事です。例えば、ねじを提供している会社であれば、ねじの原理、ねじが緩まない締め方、ねじの締結体の設計方法などをコンテンツとして用意し、それを調べて自社サイトに来訪してくれたユーザーについでに自社のアピールをするのが効果的と考えられます。

製造業のWebマーケティング特有の難しさについてはこちらで解説しておりますので、良ければご覧下さい。

製造業のWebマーケティングは他の業界と比べて難しい3つの理由

製造業がWebマーケティング戦略策定する上での考え方

製造業のWebマーケティングは主に以下の要素によって取るべき戦略が変わってきます。

  1. 事業として目指すべき方向性
  2. ビジネスモデル・商材の特性
  3. ターゲット社数と顧客リスト数
  4. ターゲット顧客の属性

それぞれの内容について順番にみていきましょう。

1. 事業として目指すべき方向性

製造業といっても町工場からグローバル企業まで幅広いです。リードファクトリーでは、経済産業省が中小企業・小規模事業者に期待される役割・機能として分類している4類型に分けて考えるべきだと考えています。

  1. グローバル展開をする企業(グローバル型)
  2. サプライチェーンでの中核ポジションを確保する企業(サプライチェーン型)
  3. 地域資源の活用等により立地地域外でも活動する企業(地域資源型)
  4. 地域の生活・コミュニティを下支えする企業(生活インフラ関連型)

上記の4分類についてはこちらの記事でも解説しているのでよければご覧ください。

中小製造業の現状と課題。高齢化問題とイノベーション促進とIT・デジタル化

まずは、自社が現在どの位置・レイヤーにいて、どこを目指すのかを明確化する必要があります。Webマーケティングの特徴として、日本全土・世界中から見込み顧客と接触できるという点があり、それを踏まえた上で具体的には以下の事業戦略が考えられます。

  • 4の企業で、3へとレイヤーを上げたい=域外からの集客のためにWebマーケティングを活用する
  • 3のレイヤーの企業ならまだ集客できていないターゲットに対して特定のWebマーケティング施策を実行する
  • 2の企業で、1へとレイヤーを上げたい=海外の引合を増やすために海外Webマーケティングを立ち上げる
  • 1の企業で、まだ販路のない国や地域において引合を増やすために、海外Webマーケティングを強化する

自社が中長期的にどのような事業戦略を採るべきなのかを考える必要があります。

2. ビジネスモデル・商材の特性

製造業のビジネスモデル・商材は大きく2つに分類されます。

  1. サプライヤーサプライヤーとは、製造過程の中で上流に位置するメーカーで、ある企業や組織が必要とする商品・素材を提供する他の企業や組織のことです。例えば、TOYOTAやHONDAなどの自動車メーカーは、エンジンやタイヤなどの部品をサプライヤーから購入します。
  2. 完成品メーカー完成品メーカーとは、製品の最終的な形を作る企業のことです。例えば、家電製品などは、部品や素材を他の企業から調達して、組み立てや加工を行って完成品にします。このように、製品の最後の工程を担う企業が完成品メーカーです。完成品メーカーは、消費者や取引先と直接関わることが多く、ブランド力やマーケティング力が重要になります。

サプライヤーのWebマーケティングの戦略策定の際には、自社の製品・素材がどのような用途で使用されているかをユーザー目線で把握したうえで、類似した使用方法や新規獲得すべきターゲットはどのような人物像かを言語化する必要があります。その上で、Webマーケティングという手段を使ってどのようにアプローチするかを考えましょう。(例:コンテンツマーケティングやリスティング広告)

完成品メーカーはWebマーケティングの戦略策定の際には、エンドユーザーの情報を確保できているかをまずは確認しましょう。完成品メーカーの場合、複雑な商流や特約店・代理店販売が中心となっていることが多く、そもそもエンドユーザーとの接点がないことがあります。

エンドユーザーとの接点やどこでどれだけ売れているかという基本的な情報が不足している場合、マーケティングに予算をかけても結果的に「どれだけ売り上げに貢献しているのか?」を把握することができません。

上記の場合、そもそもWebマーケティングによりも特約店・代理店戦略を考えた方が売り上げに直結する可能性が高いです。マーケティングと営業がタッグを組んで業務を進める必要があり、難易度は高いですがその分効果も大きいです。

3. ターゲット社数と顧客リスト数

3つ目に考慮しなければいけない点はターゲット社数です。ターゲット社数を考慮しなければいけない理由は、Webマーケティングをする上で、「どのマーケティング施策(含む営業施策)を実施した方が費用対効果が高いか?」の判断する上での指標になるからです。

こちらについては以下の参考図書を引用して記載させて頂きます。非常に分かりやすく、様々なビジネスモデルにおいても応用が利く内容が詰まっています。

参考図書:BtoBマーケティングの定石

  • ターゲット社数が100社以下の場合

ターゲット社数が100社以下の場合、Webマーケティングとは相性があまりよくないため、個々の会社をリストアップし、個社ごとに営業戦略を立てて攻略していった方が効率が良いです。Webマーケティングの特徴は日本全土・世界中から見込み顧客と接触できるという点を前述しましたが、逆に言えば「見込み顧客は選べない」ということなんです。そのため、個別攻略戦略が優先されます。

  • ターゲット社数が100社以上の場合

ターゲット社数が100社以上の場合、既存顧客リストが一定程度あるかどうかで「既存顧客深耕」or「新規顧客開拓」のどちらを選択するか、もしくはどちらを重点的に攻めるか?の判断が変わります。

上記の場合、売上をあげるにも2つの意味が存在することが見てとれます。

  • 新規顧客をコストをかけて獲得して、売上をあげる
  • 既存顧客にクロスセル・アップセルをして売り上げをあげる=LTVを高める

上場企業ならば中期経営計画を達成する上でや、中小製造企業なら突然主要取引先にスイッチされたことによる新規の売り上げ確保など様々な理由はあれど、基本的には上記の2パターンのどちらかを選択すると考えられます。

自社の製品の特長や再商談可能な製品があるのかなどを加味した上で、どちらの方針を取るかによって優先すべきマーケティング施策は変わってきます。

例えば、既存顧客はあるが、商材の特徴からして、1度売ったら終わりのようなビジネスモデルの場合、常に新規顧客の獲得をしないと持続的にビジネスをすることはできません。その場合は、新規顧客をコストをかけて獲得する方針をとり、そのためのマーケティング施策(リスティング広告や展示会など)を実施することになります。

4. ターゲット顧客の属性

最後に、ターゲットとする顧客が自社の製品に対してターゲット顧客がどの程度の知識があるのかという点です。

  • 自社の製品に対してターゲット顧客がどの程度の知識があるのかについて

自社が受託加工をしている企業だとすると、自社独自のマニアックな加工技術によってどのような加工ができるかは自社の方が詳しいです。ターゲット顧客としては悩む部分である「そもそもどの基材を選定すればいいのだろう?」となる質問に対しても、専門的な観点からアドバイスができるでしょう。

上記の場合、ターゲット顧客に対してアドバイザー的な立ち位置になりながら業務を進めていく商材の場合、まずはターゲットとの接点をもつことが大事です。Web上では全て説明することをやめ、まずは個人情報を入力してもらうことを心がけましょう。そこから相手のお悩みをインサイドセールス等でヒアリングし、具体的な商談にトスアップしてく戦略のが効率的です。

逆に、生産技術系のエンジニアやお医者さんの場合、求める商品スペックが明確に存在します。そのスペック通りの部品や製品を探しますし、お問い合わせフォームにも「○○の後継品を探しています」などと明確なニーズとして現れます。

上記の場合、あらゆる技術情報をWebサイトに掲載しつつ、○○ならこの会社だなとユーザーに純粋想起されるポジションを獲得したいです。そのためには、あらゆるチャネルのおいて、○○ならうちの会社です!!と継続的にアピールすることが肝要です。

製造業のWebマーケティングにおける主な課題

前章で、製造業がWebマーケティング戦略策定する上での考え方について解説してきましたが、戦略を立ててもそれを実行できなければどうしようもありません。

製造業のWebマーケティングにおいて実際に施策を実行する上で、以下のような課題があります。

  • 経営層や営業部門の理解や協力が得られない
  • 必要な予算や人員が不足している
  • 専門知識やノウハウが不足している
  • Webサイトやコンテンツが見込み客のニーズや興味に合わない
  • Webサイトやコンテンツの効果測定や改善ができていない

これらの課題を解決するためには、まずはWebマーケティングの重要性やメリットを経営層や営業部門に伝え、共通の目標や方針を設定することが必要です。

次に、Webマーケティングに適した予算や人員を確保し、専門家や外部パートナーと協力してWebマーケティングを実施することが必要です。そして、Webサイトやコンテンツを見込み客のペルソナやバイヤージャーニーに合わせて作成し、定期的に効果測定や改善を行うことが必要です。

BtoBマーケティングのカスタマージャーニーの特徴とは?作り方とBtoCの違いについてはこちらで解説しているので良ければご覧下さい。

BtoBマーケティングのカスタマージャーニーの特徴とは?作り方とBtoCの違いについて

そうすることで、継続的にかつ効率的にWebマーケティング活動を実施できます。リードファクトリーではこれを「マーケティングガバナンス」と定義しています。マーケティングガバナンスが機能していないと、部分最適化やマーケティング施策が上手くいっているのかどうかが分からず、ROIが見えない状態になります。

製造業のWebマーケティングを実践するためのヒントと注意点

製造業は、一般的に物理的な製品(ハードウェア)を提供する業界です。そのため、Webマーケティングを行う際には、製品の特徴や価値を伝えることが重要です。しかし、製品の情報だけではなく、ターゲットとなる顧客のニーズや課題にも応える必要があり、以下では製造業のWebマーケティングを実践するためのヒントと注意点を紹介します。

製品のメリットや差別化要素を明確にする

製造業の製品は、多くの場合、同じような機能や性能を持つ競合製品と比較されます。そのため、自社の製品がどうして優れているのか、どうして選ばれるべきなのかを明確に伝えることが必要です。例えば、以下のような点を強調することができます。

  • 独自の技術や特許を持っている
  • 高い品質や安全性を保証している
  • コストパフォーマンスが高い
  • カスタマイズやアフターサービスが充実している
  • エコロジーに配慮している

これらのメリットや差別化要素を、Webサイトやブログ、SNSなどのオンライン媒体で積極的に発信しましょう。また、実際に製品を使用した顧客の声や事例も紹介することで、信頼性や説得力を高めることができます。

例えば、実際のどのような技術を使っていて、どのような部材に使用されているのか使用用途を明確化してユーザーに分かりやすく表現しましょう。

製品の情報だけではなく、顧客のニーズや課題にも寄り添う

製造業のWebマーケティングでは、製品の情報を伝えることが重要ですが、それだけでは不十分です。顧客は、自分のニーズや課題を解決するために製品を購入するからです。そのため、顧客がどんなニーズや課題を持っているのか、どんな情報を求めているのかを把握することが必要です。例えば、以下のような方法で顧客のニーズや課題を探ることができます。

  • 市場調査やアンケートを行う
  • 顧客と直接対話する
  • SNSやレビューサイトなどで顧客の声を収集する
  • キーワード分析ツールなどで顧客の検索動向を分析する

これらの方法で得られた情報をもとに、顧客に有益なコンテンツを作成しましょう。例えば、以下のようなコンテンツが考えられます。

  • 製品の使い方や活用方法を紹介する
  • 製品に関連する業界動向やトレンドを分析する
  • 製品に関連する問題や課題を解決するノウハウやアドバイスを提供する
  • 製品に関連するQ&AやFAQをまとめる

これらのコンテンツは、Webサイトやブログ、SNSなどで配信しましょう。また、コンテンツのタイトルや見出し、本文などには、顧客が検索するであろうキーワードを含めることで、SEO(検索エンジン最適化)にも効果的です。

まとめ

この記事では、製造業のWebマーケティングの現状と課題、特徴と考え方、ヒントと注意点について解説しました。

製造業のWebマーケティングは、他の業種と比べて難易度が高く、特徴的な課題や戦略が必要です。製品やサービスが高度で専門的であり、購買サイクルが長く、複数のステークホルダーが関わります。

また、ブランドイメージや差別化要因を訴求することも難しいです。そのため、見込み客を集めるだけではなく、育成し、信頼関係を構築し、長期的にお取引をしLTVを高めることが重要です。参考になりましたら幸いです。

リードファクトリーでは製造業のWebマーケティングについての無料相談会も実施しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。