中小製造業の現状と課題。高齢化問題とイノベーション促進とIT・デジタル化

リードファクトリーの遠藤です。

日本の中小製造業は昨今の少子化によって労働人口の減少の圧力を受け変革が必要とされています。その他にも、技術者の高齢化による技術の伝承や後継者問題についても課題を抱えている企業が多いと思いまう。

そこで今回は、中小製造業の現状と課題についてIT・デジタル化の視点から解説しますので、是非最後までご覧ください!

中小製造業の定義と規模

中小製造業とは、従業員数が300人以下、または資本金が3億円以下の製造業を指します。中小製造業は、日本の製造業全体の約99%を占めており、約180万社あります。中小製造業の売上高は、約140兆円で、日本のGDPの約25%に相当します中小製造業は、日本経済の基盤となる産業であり、多様な製品や技術を提供しています。

中小製造業の定義

中小製造業は、大手企業に比べて、柔軟な対応力や独自性が高いという特徴があります。中小製造業は、ニッチな市場や地域に特化した製品やサービスを開発したり、大手企業と協力して新しい価値を創出したりしています。また、中小製造業は、地域社会に密着しており、雇用や税収などの面で地域経済に貢献しています。

中小製造業の経済的な貢献と社会的な役割

中小製造業は、日本経済にとって欠かせない存在です。中小製造業は、大手企業に比べて、高い付加価値や革新性を持つ製品や技術を生み出しており、日本の競争力を高めています。

また、中小製造業は、国内外の需要に応えるために、積極的に海外展開やグローバルな連携を進めており、日本の国際的な影響力を強化しています。さらに、中小製造業は、環境問題や社会課題に対する取り組みも積極的に行っており、持続可能な社会の実現に貢献しています。

中小製造業の分野別の特徴と傾向

中小製造業は、様々な分野で活躍していますが、ここでは代表的な4つの分野について紹介します。

食品・飲料・たばこ

  • 日本の食文化や健康志向に応える高品質な食品や飲料を提供しています。
  • 地域の特産品や伝統的な技術を活かしたオリジナル商品を開発しています。
  • 海外市場への進出やハラール認証などの取得を通じて、国際的な需要に対応しています。

化学・医薬品

  • 先端技術や素材開発によって、新しい化学品や医薬品を生み出しています。
  • 環境に優しい製品やプロセスの開発に取り組んでいます。
  • バイオテクノロジーやナノテクノロジーなどの分野で、革新的な研究や開発を行っています。

機械・電気・電子

  • 工作機械や自動車部品などの高精度な機械製品を製造しています。
  • ロボットやAIなどの先進技術を活用した製品やサービスを提供しています。
  • IoTや5Gなどの情報通信技術を駆使したスマートファクトリーやスマートシティの実現に貢献しています。

繊維・衣服・皮革

  • 日本の伝統的な染色や織物などの技術を継承しつつ、新しいデザインや素材を開発しています。
  • 機能性や快適性に優れた衣服や靴などの製品を提供しています。
  • ファッションやライフスタイルに合わせたオーダーメイドやカスタマイズのサービスを展開しています

中小製造業の成長イメージ

中小製造業は、日本経済の重要な柱の一つです。しかし、近年は人手不足や競争力低下などの課題に直面しています。そこで、中小製造業が成長するためにはどのようなイメージを持つべきでしょうか?

成長のプロセスとしては、以下のステップが考えられます。

経済産業省がは、中小企業・小規模事業者に期待される役割・機能を、「グローバル展開をする企業(グローバル型)」「サプライチェーンでの中核ポジションを確保する企業(サプライチェーン型)」、「地域資源の活用等により立地地域外でも活動する企業(地域資源型)」、「地域の生活・コミュニティを下支えする企業(生活インフラ関連型)」の四つの類型に分類しています。

経済産業省:第1回中堅企業・中小企業・小規模事業者の活力向上のための関係省庁連絡会議

  • 1. 地域コミュニティ型

地域コミュニティ型は、町工場のようなイメージです。地場の小さな経済圏の中で商売をし、地元の方を従業員として雇い、売上規模としては数千万円~一桁前半億円ほど。

  • 2. 地域資源型

地域資源型は、温泉街が一番イメージしやすいかもしれません。山形県の銀山温泉を例にしてみますと、地域資源である温泉、美しい温泉街、美味しい郷土料理を使い山形県ではなく、全国のみならず海外からもお客さんを集めています。地域コミュニティ型とは違い、地場の経済圏だけで収まらず、域外からも顧客を獲得できているのが特徴です。

製造業でいうと、特徴的な技術や名産品を使用した製品を製造しており、ブランディングやマーケティングの力を活用をすることで域外から問い合わせを受けている製造業が該当すると考えられます。

地域内需要の減少が進む中で、引き続き利益を獲得していくためには、コストの削減だけではなく、販売数量の増加や販売単価の上昇を目指す必要があり、そのためには商品・サービスの優位性を持つことが重要である可能性を指摘した。経営資源が限定的であるといわれる小規模事業者が、商品・サービスの優位性を獲得するための一つの有力な方法として、地域資源の活用が重要であると考えられる。

(1)地域の特産物である農林水産品、(2)地域の伝統工芸品、(3)地域の産業集積に由来した鉱工業品及びその技術、(4)文化財、自然景観、温泉等の観光資源、(5)その他、自社が地域に由来する資源

出典:小規模事業者における地域資源の活用

  • 3. サプライチェーン型

サプライチェーン型は、中小製造業というよりは中堅・大企業に近いところですね。サプライチェーンでの中核ポジションを確保する企業であり、グローバル展開をする完成品メーカ向けに主要部品を納品している会社がイメージしやすいでしょうか。当然ではありますが、完成品メーカーというよりはサプライヤーの立ち位置の会社ですね。

  • 4. グローバル型

グローバル型は、グローバル展開をする企業。製造業ではTOYOTAや完成品メーカーがイメージしやすいでしょう。また、積水化学工業など海外の完成品メーカー向けに素材を納品している企業も当てはまると考えられます。

以下は経済産業省のHPに記載がある、中小企業における、各企業の目指す姿として最も近いものについて確認したものです。

全体として、「〔4〕生活インフラ関連型」と回答した企業が39.2%と最も多く、次いで、「〔2〕サプライチェーン型」が25.1%、「〔3〕地域資源型」が13.8%、「〔1〕グローバル型」が12.9%となっています。

製造業では「〔2〕サプライチェーン型」」と回答した企業が34.5%と最も多く、次いで、「〔4〕生活インフラ関連型」が24.0%、「〔1〕グローバル型」が16.8%、「〔3〕地域資源型」が14.8%でした。

第1-4-7図 業種別、目指す姿の類型

中小企業・小規模事業者の多様性と役割・機能

中小製造業が直面する高齢化の問題

日本の中小製造業は、高齢化という大きな問題に直面しています。高齢化は、中小製造業にとって、人材不足や技術伝承の困難さ、生産性や競争力の低下など、様々な影響を及ぼしています。

高齢化が中小製造業にどのような影響を与えているのか、どのように対応しているのか、そしてどのような将来展望や可能性があるのかについて、詳しく解説していきます。

高齢化が中小製造業に及ぼす影響

高齢化は、中小製造業にとって、以下のような影響を及ぼしています。

  • 人材不足:高齢者の退職や若者の就職難により、中小製造業は人手不足に悩まされています。特に技術や経験が必要な職種では、人材確保が困難です。人材不足は、生産量や品質の低下、納期遅れや顧客満足度の低下など、ビジネスに悪影響を与えます。
  • 技術伝承の困難さ:高齢者が退職すると、その技術やノウハウが失われる可能性があります。中小製造業では、多くの技術や知識が口伝や経験に基づいているため、後継者への伝承が難しい場合があります。技術伝承ができないと、中小製造業は独自性や競争力を失う恐れがあります。
  • 生産性や競争力の低下:高齢化は、中小製造業の生産性や競争力にも影響を与えます。高齢者は若者に比べて体力や能力が低下する傾向があります。また、高齢者は新しい技術や変化に対応するスピードや柔軟性が低い場合があります。これらの要因は、中小製造業の効率や革新性を阻害する可能性があります。

高齢化に対応するための中小製造業の取り組みと課題

高齢化に対応するためには、中小製造業は以下のような取り組みを行っています。

  • 人材育成と定着:人材不足を解消するためには、中小製造業は人材育成と定着に力を入れる必要があります。人材育成では、高齢者から若者への技術伝承や、若者のスキルアップやキャリア形成を支援することが重要です。人材定着では、高齢者の再雇用や働き方の改善、若者の雇用安定や待遇の向上など、働きやすい環境を整えることが重要です。
  • 技術革新と生産性向上:生産性や競争力を向上させるためには、中小製造業は技術革新と生産性向上に取り組む必要があります。技術革新では、デジタル化や自動化など、最新の技術を導入することで、効率や品質を向上させることができます。生産性向上では、業務プロセスの見直しや改善など、無駄やムダを排除することで、コストや時間を削減することができます。

しかし、これらの取り組みには以下のような課題があります。

  • 資金や人材の不足:中小製造業は、大企業に比べて資金や人材が不足している場合が多いです。これは、技術革新や生産性向上に必要な投資や教育を行うことを困難にします。また、人材不足は、人材育成や定着にも影響を与えます。
  • 抵抗感や意識の低さ:中小製造業は、伝統的な製造業文化や慣習に固執する傾向があります。これは、技術革新や生産性向上に対する抵抗感や意識の低さを生み出します。また、高齢者や若者の間にも、働き方やキャリアに対する価値観の違いやギャップが存在します。

高齢化による中小製造業の将来展望と可能性

高齢化は、中小製造業にとって、危機だけでなくチャンスでもあります。高齢化によって生まれるニーズや市場に対応することで、中小製造業は新たなビジネスチャンスを掴むことができます。以下は、高齢化による中小製造業の将来展望と可能性の例です。

  • 高齢者向け製品やサービスの開発:高齢者は消費者としても大きな市場です。高齢者は安全性や使い勝手などにこだわる傾向があります。中小製造業は、高齢者のニーズに応えるような製品やサービスを開発することで、差別化や付加価値を高めることができます。
  • 高齢者の活用と共創:高齢者は経験豊富で知識豊富な人材です。中小製造業は、高齢者を活用することで、技術伝承や教育などに役立てることができます。高齢者と共創することで、新たなアイデアやインスピレーションを得ることもできます。高齢者は、中小製造業の製品やサービスのユーザーでもあります。高齢者の意見やフィードバックを聞くことで、中小製造業は、ユーザーの満足度やロイヤルティを高めることができます。
  • 高齢化社会への貢献と社会的責任:高齢化は、社会全体に影響を及ぼします。中小製造業は、高齢化社会への貢献と社会的責任を意識することで、社会的な評価や信頼を得ることができます。中小製造業は、高齢者の生活の質や健康などに関わるような製品やサービスを提供することで、高齢化社会の課題解決に貢献することができます。

以上のように、高齢化は、中小製造業にとって、危機だけでなくチャンスでもあります。高齢化によって生まれるニーズや市場に対応することで、中小製造業は新たなビジネスチャンスを掴むことができます。中小製造業は、高齢化に対応するために、柔軟な発想やイノベーションを持つことが重要です。

中小製造業に求められるイノベーションとデジタル化の必要性

中小製造業におけるイノベーションとデジタル化は、中小製造業が競争力を高めるために欠かせない要素です。しかし、中小製造業は、イノベーションとデジタル化に対する理解や取り組みが不十分な場合が多くあります。

イノベーションとデジタル化が中小製造業にもたらすメリットとチャンス、イノベーションとデジタル化を推進するための中小製造業の戦略、イノベーションとデジタル化に関する中小製造業の課題と対策を紹介します。中小製造業の方々がイノベーションとデジタル化に積極的に取り組むきっかけになれば幸いです。

イノベーションとデジタル化が中小製造業にもたらすメリットとチャンス

イノベーションとデジタル化は、中小製造業に多くのメリットとチャンスをもたらします。まず、イノベーションとデジタル化によって、中小製造業は自社の製品やサービスを改善し、付加価値を高めることができます。例えば、IoTやAIなどの技術を活用して、生産性や品質を向上させたり、新しい機能や特徴を付与したりすることができます。

また、イノベーションとデジタル化によって、中小製造業は自社のビジネスモデルや経営戦略を変革し、新たな市場や顧客を開拓することができます。例えば、オンラインやクラウドなどのプラットフォームを活用して、販売チャネルやサプライチェーンを拡大したり、カスタマイズやサブスクリプションなどの新しい価値提案を行ったりすることができます。さらに、イノベーションとデジタル化によって、中小製造業は自社の組織や文化を変革し、創造性や柔軟性を高めることができます。

例えば、オープンイノベーションやコラボレーションなどの手法を活用して、社内外の人材や知識を結集したり、フラットやアジャイルなどの組織形態や働き方を導入したりすることができます。

イノベーションとデジタル化を推進するための中小製造業の戦略

イノベーションとデジタル化を推進するためには、中小製造業には以下のような戦略が必要です。まず、中小製造業は自社の強みやニーズを明確にし、イノベーションとデジタル化の目的や方向性を定めることが重要です。

イノベーションとデジタル化は、単に技術や手段ではなく、ビジネスや社会に価値を提供するための手段です。そのため、中小製造業は自社のビジョンやミッションに沿ったイノベーションとデジタル化の計画を立てる必要があります。

次に、中小製造業は自社のリソースや能力を評価し、イノベーションとデジタル化の実行力を強化することが重要です。イノベーションとデジタル化は、多くの投資や努力を要するプロセスです。そのため、中小製造業は自社の財務や人材、技術などのリソースや能力を見直し、必要な場合は外部のパートナーや支援機関などと連携することが必要です。

最後に、中小製造業は自社の成果や課題を測定し、イノベーションとデジタル化の改善力を高めることが重要です。イノベーションとデジタル化は、常に変化や進化を求められるプロセスです。そのため、中小製造業は自社のイノベーションとデジタル化の成果や課題を定期的に測定し、フィードバックや学習を通じて改善することが必要です。

ここでは、イノベーションとデジタル化を推進するための中小製造業の戦略について説明しました。中小製造業はイノベーションとデジタル化に積極的に取り組むことで、自社の強みや特徴を生かしながら、ビジネスモデルや価値提案を変革することができます。イノベーションとデジタル化は中小製造業にとって、単なる選択肢ではなく、必須の戦略です。今後も中小製造業がイノベーションとデジタル化に挑戦し続けることで、日本の産業界に新たな活力と可能性をもたらすことでしょう。